第6章





緑が続く田舎道

1台のハーレーが砂煙を舞い上げながら爆走してくる



アフロとしんへいである。



しんへいは気になってた事をアフロに聞く為、
バイクを止める様にアフロに言った。
小川が流れる田んぼ道で二人はバイクから降りた。


「アフロお前どうやってあのフォームを身に着けたんだ?」
しんへいはそれがどうしても知りたかった。


アフロは地べたに座り込み、
遠方にそびえる紅葉の山々を眺めながら
「あれは俺が6歳ぐらいだったかな〜」
自分が幼かった頃の話を懐かしむように
語り始めた。




彼は幼少のころ大好きな父親から誕生日にグローブを買ってもらった。
その日以来、彼は学校から帰るなり
毎日、毎日近くの公園で
日が暮れてボールが見えなくなるまで
壁投げをやっていた。


そんなある日
いつものように壁投げをしていたアフロに
バイクに乗ったおじさんが話かけてきた。
アフロはそのおじさんが良くここを通るたびに
バイクを止め壁投げをしている自分を見ている事を知っていた。


「坊主、ボール投げが好きなんだな」おじさんはそう言って
アフロの頭をポンポンと叩いた。
そしてアフロのボールを手に取ると
壁に向かってボールを投げて見せた。







その大胆なフォームにアフロの目は釘付けになった。







「スッゲー!」アフロはおじさんにもう一回、もう一回と
何度もおねだりしてそのピッチングフォームを見せてもらった。
そしておじさんは「このフォーム、そんなに気に入ったか?」
とアフロに聞いた。


アフロは「僕にその投げ方教えてくれよ〜」とおじさんにお願いしだした。
おじさんはとても優しく手取り足取りでその投げ方を教えてくれた。
しかし、そう簡単に真似出来る程あまくは無い。


アフロは何度もバランスを崩し地べたにはいつくばった。
それでもアフロは何度も何度もおじさんに教えてもらう事をあきらめなかった。
「お! そろそろ俺も行かなくちゃ」おじさんが言うと
アフロはどこに?と尋ねた。










「球場さ、今から家に帰ってテレビを見ててご覧。俺が投げるから」
そう
彼はプロ野球の現役ピッチャーだった。









彼のピッチングはとことんストレートにこだわったピッチングで
どんな場面でも決して変化球で勝負する事を嫌った。
あくまで強気で直球勝負!
それが彼の信念でもあった。
その直球にこだわった男が作り上げた独特のピッチングフォーム。
それはあの沢村栄治を思わせる大胆なフォームで
彼は年間奪三振の記録保持者でもあった。


アフロはテレビに映った背番号14のあのおじさんのピッチングに食い入るように見入っていた。


「スゲー! また三振だ〜!」


その日からアフロはその背番号14をテレビで見るのが楽しみで
毎日壁投げから帰ってくるとテレビの前で奪三振ショーを観戦していた。









しかしある日
突然その背番号14が引退してしまったのだ。
直球にこだわるばかりに彼の肩は普通のピッチャよりも寿命が短かった。








あの大胆なフォームをもうテレビで見れないと思うとアフロは悲しかった。
それからアフロは来る日も来る日も彼からおそわったフォームを練習した。
自分なりに体を鍛え、どうやったらあの大胆なフォームで豪快な球を投げれるのか。
あの時おじさんが教えてくれた色んな事を彼は一つも忘れる事無く
脳裏に叩き込んでいた。










あの時自分の為に見せてくれたあの1球を
自分も投げたい。









その思いは彼が高校に入っても忘れなかった。
アフロは今でもその公園であの壁に向かい
一人で投げていたのだ。


その話を聞いていたしんへいは、
自分にもあの時のアロハーが投げたそれが
アフロの話とダブってきて
なんだか胸が熱くなってきた。


「お前いまでも練習しているんだ。」そう言うとしんへいは
明日から俺にその球を受けさせろと言い出した。


「さっきのキャッチャーはお前の球を補給出来なかったろ」
「多分お前の投げるその球はかなり完成の域に来ているんじゃないのか?」
「それを補給することは容易ではない事ぐらい素人の俺でも見てて分かった」
「だが俺は、その球をこの手でまず掴みたい!」
「どんな球なのか、俺のこの手で掴んで確かめたい!」
「明日から4軍のグラウンドで二人で練習しよう!」


しんへいは自分でもなんでこんなマジな事を言っているのだろうと
不思議に思えた。




しかし、その思いはまぎれも無く本物だった。




最後にしんへいが聞いた。

「そのおじさんが乗ってたバイクってひょっとしてハーレーだったのか?」

アフロ「そうなんだ。あれがハーレーだと知ったのは高校になってからだったけど」

「それいらいハーレーは俺の憧れの乗り物さ!」

しんへい「その背番号14って選手、名前はなんて言うんだ?」



アフロ「ワイハー」



二人の頭にはある人物の顔が浮かんだ。

「まさかあいつじゃないよな〜!!」

その頃アロハーはアフロが置いていった暴走族仕様のバイクで
世間のひんしゅくを買いながら家路に向かっていた。




あのやろ〜! 覚えてやがれよ〜〜!