第21章〜甲子園編8〜





アッパースイング


アッパースイングはメジャーリーガーのマグワイヤーや西武のカブレラに代表されるスイング法で
大アーチ特大ホームランを生み出す打法であるが、
小、中学野球指導者の中にはアッパースイングは駄目というコーチも多い。
しかし、それは難しいので今は駄目という事であって、バッティング理論の原点はアッパーであり
アッパーこそ理想的な打撃方法だと言う指導者も多い。


また、このスイングは強靭な腹筋、背筋、腕力、上半身、下半身が必要で
筋骨隆々、逆三角形体型の体格の選手でなければその本来のメリットを十分に発揮出来ない為、
日本では意外と指導者に嫌われる打ち方だったりもする。


しんへいの非凡な素質を見抜いていたはなは、しんへいにこのアッパースイングを叩き込んだ。



そして、この試合でも・・・



浮き上がる真弓の変化球をアッパーで迎え撃つと言う事は
球筋に対し「線」でバットを合わせるのでは無く、
「点」でボールを捉えなくてはいけない。
スピードもある真弓の変化球を「点」で捉える事は容易な事ではない。
2打席目はあえなく空振りで終わってしまっていた。


しかし・・・


真弓との3打席目の対決

回も7回裏とあってこれが最後の対決になるかもしれない。
しんへいは、真弓をじっと睨みつけバットを立て、


うおりゃ〜〜〜〜!」と自分自身に気合を入れた。
キャッチャーの石垣がその気迫の凄まじさに一瞬たじろぐ程であった。


「凄い気迫だ・・・」


「真弓、初球は打ち気を誘って高めにボールになる変化球だ。こい!」


マウンドの真弓にサインを出した。






ボ〜〜〜ル!

ワンボール、しんへいはピクリとも反応しない。




「誘いに乗らないか・・・じゃあ次はインコース高めに入ってくるストライクだ、低めは禁物だぞ!」

アッパースイング打者に対し低めはすくい上げられて簡単にスタンドに持っていかれる。
バッテリーは徹底した高めで攻めていく。


ストラィ〜〜〜〜ク!

ワンストライク、ワンボール









既に真弓の体力は限界に達していた

しかし・・・

バックで精一杯、激を飛ばしてくれるナインの声がプレイが

彼の力投を支えた。





3球目

石垣の構えるコースに、まだこんな球が投げれるのかと思う程
威力のある球が外角高めコース一杯に浮き上がりながら入ってきた。
しかし、その球はしんへいが待っていた球だった!
彼はあえて高めに的を絞っていた。

















アロハー「しんへい〜! いくぞ〜!」

バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!

カキ〜ン!

アロハー「残念でした〜! 今打ったのは白球ね」

後ろを見ると今飛んできた赤球が転がっていた。

既にバックネット前には500球ほどボールが転がっていた。

しんへいの手には豆が出き、それが潰れグローブが赤く染まっていた。

しんへい「もう一回!」

毎日、毎日その赤球を打ち返す為に何千回とスイングした。

彼のスイング速度は既に1流の領域に達していた。

そして遂に、見事に赤球をオーバーフェンスさせた。




















来た!

しんへいは真弓が投げた3球目の
低めから浮き上がってくる出鼻にポイントを合わせ
大きくステッフをく踏み込み



豪快に振りぬいた!!



ジャストミートしたその打球は、まるでピンポン球のように弾け飛び、
あっという間に場外まで飛んでその姿を消した。




それは、かつて誰も見たことが無いほど、高く、遠く、そして豪快なホームランだった。











うおォォォォォォォォォォォォ!!!

そのあまりに豪快なスイングと打球に

アルプス・スタンドが大歓声で揺れた。












バットを投げ捨てたしんへいは、
その大歓声の中を右手を高々と掲げダイヤモンドを1週し
ベンチに戻ってみんなからボコボコにされた。
いや祝福しているのだろうが・・・
どうみてもボコボコにされていた。


0が並ぶスコアボードに貴重な点が刻まれた。


7回終わって


パワラン学園 1対0 農業大縁