第12章〜甲子園編3〜





春の選抜大会準決勝、
第1試合
1回の表から大変な事になっています!

実況アナウンサーの声がテレビから聞こえてくる。

おいおい、どうしたんだ!

繁華街のお店に設置されたテレビモニターに
野球ファンが群がってくる。



先頭打者敬遠!
しかも3連続敬遠・・・
塁はあっというまにランナーで埋まった。
バッターボックスにはノーアウト満塁で4番の嵐がバッターボックスに向かう。
前代未聞のこの場面、どう考えても理解出来ない作戦。
しかし、誰が見ても、確かに分かる事が一つだけあった。

それは・・・









打席に入ったバッターが完全に切れている!









ノーアウトで自分の前のバッターを全て敬遠で歩かせ、あえて満塁にして4番を迎えるといった
あまりにも無礼なバッテリーに嵐は激怒していた。


「舐めたまねしやがって! かかって来い!!」


チームの4番を任される男にとって、これ以上の屈辱は無い。





実況「さあマウンドのアフロ君、キャッチャーのサインに対し首を立てに振って

大きく振りかぶった! 今度は勝負だ〜〜!!」


ビシィという音と共にアフロの手を離れたボールは、バッターに近づくにつれグングンと伸びてくる。
嵐は思いっきり打ちにでた。
しかし、嵐が出したバットの10cm程上をボールはホップしてミットに収まった。
タイミングも完全に振り遅れている。


ズバ〜ンという音と共にアルプス・スタンドが一斉に沸いた。


ストラィ〜〜〜ク!


しんへいが返球の祭、ニヤリとマスクの中で笑った。
アフロもニヤリと微笑んだ。







第2球

同じモーションから放たれた球は先ほどより多少球威が無いもののそれでも十分早い!
嵐はその球にドンピシャのタイミングでバットを振り出した。
先ほど明らかにボールの下を振りぬいた嵐は、ボールの伸びを計算に入れてバットを合わせにいった。





が、しかし・・・


先ほど程、ボールが伸びない?!

嵐のバットは明らかにボールの上を叩いた。

ボテボテの当たりだ。




サードのZETがそれを予測していたかの様に猛然とダッシュしていた。
ボールを素手で取ったZETは至近距離にも関わらずサイドスローでクイックに早い返球でホームを刺す。


1アウト!


キャッチャーのしんへいがファーストへ弾丸ライナーで


2アウト!


キャッチしたヨウがすかさずセカンドへ送球して3アウト目を狙う!


しかし、2塁ランナーが3塁ベースを蹴り
ホーム突進を伺っている。


2塁にはショートのゆうがベースカバーに既に入ってる。
2塁でアウトにしてもその間にランナーがホームを踏めば先取点を取られる。


と、その時!







実況「ああ〜〜! 2塁に送球しようとしたヨウ君、
2塁ランナー(3塁でホームを狙ってるランナーの事)の動きに目を取られ
ボールがすっぽ抜けた〜〜〜!!








それを見ていた2塁ランナーがゆうゆうホ〜〜〜ムイ、イ、イ、
・・・・・いや


アウト?!です


2塁ランナーホームでタッチアウトです!!!!








なんで?








3アウト!!!!

実況「トリプルプレーです!!

ノーアウト満塁があっと言う間に3アウトです!



しかし解説のやまさん、今ファーストのヨウ君の手からボールがすっぽ抜けましたよね?

何故そのボールがホームに?」



やま「いや〜驚きました! スローを見ながら今の一連のプレーを解説したいと思います。
まずピッチャーのアフロ君は第1球目、かなりホップの効いたボールを投げましたよね。
その球のかなり下を振りぬいたバッター嵐君は、2球目ではそのホップを予測しながら
バットを合わせにいったのでしょうが、この2球目は1球目程球威がなく、その為ホップも殆どしなかった。
それで嵐君は思わずボールの上ッ面を叩いてしまったのですが、
サードのZET君が既にダッシュしていた所を見るとこれはバッテリーの作戦だったのでしょう。


そしてホームで1アウトを取り、ファーストで2アウト、問題は次です。
ヨウ君がボールを2塁に投げようとした訳ですが、ボールがすっぽ抜け。
1〜2塁間の真ん中あたりにふら〜とボールが浮いた。


しかし、


セカンドのガンク君がそのボールに合わせて走りこんでいた。
ジャンプ一番、素手でボールをキャッチし、そのまま空中でジャンピングスロー!
矢のような送球がキャッチャーしんへい君のミットに収まり、ランナータッチで3アウト!


ヨウ君はわざとボールをすっぽ抜けさせ、ランナーをホームに突入させた訳ですよ。
このタイミングで2塁に投げていても間違いなくセーフだったでしょう。
このすっぽ抜けは実はセカンド、ガンク君へのトリッキーなパスボールだった訳です。


いや〜〜〜〜〜凄い!!!


バッテリーを含めた内野手全員のチームプレイで作り上げた驚くべきトリプルプレー!!


一つ間違えば大量得点に繋がるこんなプレーを、
作戦として出したベンチのはな監督は、なんと大胆な・・・
選手に対し絶対の信頼を持っていなければ、
こんなプレーを作戦として出せませんよ」




実況「なんというチームでしょう〜〜!!」















それにしてもピッチャーアフロがこの初回にまともに投げた球は、たったの2球だけ。

この「敬遠」というプレイを以外な方向で作戦に取り入れたはな監督の真の狙いは・・・