〜遥かな夢〜

剛球伝説「背番号14」


By アロハー














第1章





ここはとある繁華街

地下鉄の駅を中心に衣料専門店やブックセンター、パチンコ店やゲーセン等の遊戯施設が立ち並ぶ。

もちろん「アニメイト」もある。

この地下鉄駅を利用し私立中学や高校に通う学生達も多い
今日も学校生活をおえた学生達が、この駅から出てくる。




中学生達はそのまま真っ直ぐ家路に向かうのだが
高校生ともなると、近くの本屋に立ち寄ったり
衣料店を覗いてみたり
CDショップで商品をあさってみたりと、
まぁ〜色々と興味を持ち出す年頃でもある。




しんへいは今日も行き着けの「アニメイト」でお気に入りのアニメソングのCDを買いあさっていた。
彼はパワラン学園の2年生で学園きっての悪である。


その彼がアニメイトで目的のCDを「購入」したのか「拝借」したのかはふれないが、
アニメイトから出てきた。


2つ目の角を曲がるとゲーセンがあり
その横の駐車場を通り掛かったその時である、









彼の目が光った









ゲーセンの横の駐車場で見るからに不良と思える連中が数人たむろしていた。

しんへいは根っからのケンカ好きで、不良を見ると拳が騒ぐ。

「おまえらアフォ高校の生徒だろ ウンコはトイレでするんだよ んなぁ事も分からん程アフォなのか?」

ヤンキー座りしている不良達に、とてもとても挑戦的な言葉でけしかけるしんへい。

不良達の視線が一斉にしんへいに向けられる。

「ほ〜パワラン学園のしんへい君じゃないの〜」

どうやらしんへいは他所の高校まで名が知れ渡る程、有名な悪のようだ。

不良の一人がそばに落ちていたバットを手に取り



なめてんじゃねぇ〜よ!

としんへいに殴りかかった!



しんへいは素早く身を交わしふところからムチを取り出したら、それはS☆J。
ここでのしんへいはムチなど使う訳も無い。

身を交わしたしんへいは向かってきた不良に右拳でジャブを2発噛まし
留めにボディーブローを食らわせた。
うずくまって苦しんでいるそいつからバットを取り上げ
「次はどいつだ〜?」とバットを振り回し挑発する。

そこに40そこそこのおやじが通りかかった。
「ほ〜、面白そうな事やってるじゃん」そう言ってこの場に割って入って来たこのおやじ。
パワラン学園の野球部監督のアロハーだった。








「お前バットの振り方まちがってるぞ」








アロハーはそう言うとしんへいのバットを取り上げ、
「バットってのはこうやって振るもんだ」とスイングして見せた。
ブンという空気を切り裂く音の凄まじさにそこに居合わせた不良達は、
このおやじが只者では無い事を一瞬で感じ取った。

俺からいとも簡単にバットを取り上げたあの腕力といい今のスイングといい、
このおっさん只者では無い、
そうあっけに取られているしんへいに、おやじは「スイングしてみな」とバットをしんへいに戻した。







そう言われて素直にそうする悪は居ない。







「へ! 何言ってんだこのおやじは おめぇ〜の頭ぶん殴ってやろうか!」
しんへいがそう息巻いた。

「おいおい、ぶん殴るのは俺の頭じゃない」アロハーは笑いながらそう言い返すと、
バックから何やら取り出した。
「ぶん殴るのこれだ」そう言って見せたのは真っ白の硬式野球ボールだった。
アロハーはその場から数10メートル歩いていき、








「さぁ〜いくで〜! ぶん殴れるものならぶん殴ってみな!」








そう言うと、その白球を右手に大きくワインドアップすると左足を高々と蹴り上げ、
上半身の反動をフルに使った豪快なピッチングフォームでしんへい目掛けて魂心の1球を投じた。

放たれたその球は凄まじいスピードでしんへいの脇腹あたりをかすめ
後ろのフェンスに突き刺さった。

その球のあまりのスピードにしんへいは全く身動きする事すら出来ず、
その威力に一瞬だが恐怖心すら感じた。








「この俺が・・・ビビッタ?」








その時、彼の心に明らかに
この白球に対する闘争心が刻まれた。

アロハー「お前、パワラン学園の生徒だろ。俺はそこで野球を教えている。
その白球をぶん殴りたかったら野球部の4軍に遊びにきな!」

そう言い残すと彼は駐車場に止めてあったハーレーに跨り
何処えと去っていった。

そう言えばカッコイイのだが実は3軒となりの「アニメイト」へはいっていったのだった。

あくる日、しんへいが野球部の4軍部室に姿を現したのは言うまでも無い。

部室の扉を開けたそこには、見慣れたガン面が並んでいた。
ゆう、ヨウ、ガンク、みんな学園2学の悪である。

しんへい「お前ら野球部だったのか?」
ゆう「しんへいじゃん! お前がなんでここに?」

実はゆうやヨウ、ガンクは中学時代野球をやっていて、
高校に入ってもこの学園の野球部に入部したのだが、
当初は1軍で華麗にプレーしていたものの、
生活面で問題ばかり起こし、今ではこの4軍チームにぶち込まれた次第で
ここでの彼らの生活はと言うと、部室でマージャンをしたりタバコを吸ったりと
野球のそれとは全くかけ離れた悪の愛好会というか溜まり場となっていた。



「で、お前何しに来たんだ?」
加えタバコのヨウがしんへいに問いかけた。



まさかこの状況を見て野球を習いに来たとか言えるわけが無い。

しんへいは「俺もマージャン混ぜてくれよ」と空いてる席に腰掛け、
内ポケットから洋モクの「ウィンストン」を取り出し、それを吹かしながら
彼らに混じってマージャンを始めた。

「ウィンストンとはしゃれてんじゃん」ヨウはマイルド7愛好家だが
そのおしゃれなケースがとても気になり一本俺にも吸わせてくれよと
まさに不良の溜まり場の光景であった。

「で、お前ら野球の練習とかはやんないのか?」としんへいがそれとなく聞いてみた。



ガンク「今更野球なんてやってられっかよ!」
ゆう「んだ〜んだ〜」
ヨウ「野球ってなに?」



しんへいは、まじめに野球に興味を持ってここにやってきた自分がはずかしくなり
野球なんてバカがやるもんだよな〜!」と大言を吐いた。

すると3人は声を合わせてしんへいに言い放った。







てめ〜!野球の事をバカにするんじゃ無い!







3人は野球を知らない物から野球をバカにする言葉を聴いて余程腹がたったようで、
実は3人とも心の底では今でも野球が大好きなようである。